No Surrender
2019.03.26
VITZレース 第1戦 鈴鹿。
早いものでこのVITZレース活動を始めて3年が過ぎた。
「もっともっと車を好きになろう!」の合言葉で見よう見まねで
訳も分からず参加したのが昨日のことのようだ。

今ではお客様も応援に駆けつけてくれるようになり
今では当社の中で定番化した活動と言えるであろう。
今年は変革の年となった。
エースであった勝利レッドのエースがヴィッツを卒業。
86ではステアリングを握り続けるものの、
この一連のレース活動の総監督に就任。
ブルーに乗っていたルーキーがエースの称号であるレッドに。
中堅エンジニア(フク)がブルーに変更。
そしてフクが載っていたピンクには新ドライバーが参戦する予定だ。
今年で3年目になるモリとフク。
エースが卒業となった今、この活動を伝承していく重責を
担う事になる。

予選スタート。
正直な所、佇まいからも想像できるように走りも
モリが成績優秀、フクが見た目面白的なイメージがあり
モリが遥か先を先行しフクが後からビジュアルで魅せるという
のが定番だったので今回もそんなイメージで見ていた。
エースであるモリは予選前の占有走行では2番手。
予選で自分の走りが出来ればポールポジションも夢ではない。
走りにもそれが見て取れ、アグレッシブに攻めることで
タイムを重ねていく。
意気揚々と素晴らしい走りを見せる、、、が、
走行位置があまり良くなかったのもあり、自分がシュミレートした
思い通りとはいかず途中からは焦りが見え始める。
ドライバーの技術と気持ちとマシンの状態、
刻一刻と変化する周囲の状況。そしてお客様も含めたレースに係る
全員の気持ち。全てが1つになって初めて良い結果が生まれる。
一度ズレ始めたリンクは少しづつ蝕んでいく。
そして第一コーナーでスピンしてしまう。
気合を入れなおしてシフトを入れてリスタート。
その刹那、それまで素晴らしいタイムを重ねていたフクが
第一コーナーで大きくスピンしマシンが横転してしまう。


この時点で赤旗中断⇒終了となり予選が終わってしまった。
終了次第のタイムを取られて順位をつけられるため
モリはリカバリー時間を与えられず8位。
フクは自己最高の3位スタートが確定した。

幸いフクのけがは無かったがマシンは大怪我を負ってピットに帰ってきた。
言葉を交わさなくても状況を見ただけで誰もがこれをこれ以降の参戦は
無理だと思わせるに充分な「満身創痍」の状態だ。
瀕死の状態の家族に寄り添って手を握るような気持ちでマシンの横で
ただただ辛い顔をしたフクがいた。普段底抜けに明るいフクが雰囲気に完全に飲まれ、
折角の好タイムも吹っ飛んでしまい、そんな事より大事な車を怪我させてしまったという
自責の念で決勝に向けて気持ちをあげる以前の状態になっていた。
どうすれば良いか分からない。でも自分では何もできない。
でもどうにかしてやりたい。元の状態に戻してやりたい。
堂々巡りの気持と戦っていると自然と涙が出てきていた。
必死に自分に言い聞かせ、自分を説得しているかのような
迷いのある佇まいを見て周囲もそういう思考に支配されていく。
もう無理だ・・・諦めるしかない・・・

しかしその中に1人だけ冷静に状況を見極め、
全員ダメだと思っている中で1人だけ明日何事も無かったように
車が走っている姿を想像して前向きに行動している男がいた。
エースエンジニアのオガだ。
クルマを見つめるその姿は俯瞰で見ると冷たいように見えたかもしれない。
でも見た目からは分からないオーラを力強く放つ。
フクの気持を痛いほど理解しているからこそ熱い気持ちでクルマに視線をぶつける。
去年まで整備士の最高峰の資格試験等で大きなハードルを
努力で超えてきたガッツ。しかも必死に頑張って掴んだ好タイム。
言葉では言わないけれど今迄の必死の努力を知っている。
晴れ舞台に水を差したくない。いや、させるか!
彼の整備士魂に火がついた。
明日是が非でも満足に走れる状態に。
次の日の朝にはその状態にする。
こうなれば良いな・・からそうやりきるんだ!へ。
それには何が必要か。作業時間はどうか。
ゴールは決まっている。彼の中で膨大な逆算が始まった。
細々した作業を全て1人でシュミレーションし、出てきた答えは
彼の技術力と作業効率をもってしてもギリギリの計算結果。
行ける!いや、アイツの為に行かなくては!!
「朝までに治すぞ」
静かではあるけれと力のこもったオガのたった一言。
オガがフクの肩を軽くポンと叩く。
「任せろ」
実際にこういったのではない。
でも肩を叩くそのしぐさがそれを意味する。
お前1人の責任ではない。苦しさを1人で背負うな。
明日安心して走れるようにしてやるから任せろ。
たった一つのしぐさで全ての意味を理解したフクは
今迄1人で耐えてきた自責の念のタガが一気に外れ
大粒の涙を流す。
「ありがとうございます・・・」
消え入るような声でエースエンジニアの背中を見つめ
祈るような気持ちで車を見つめていた。
気持のスイッチが変わったのはフクだけではない。
周囲の状況が大きく一変した。彼の一言で迷いが一瞬で消えさり、
今迄バラバラだった個々の気持が「朝までに治す」という目標を
得て全てリンクし始めた。


部品を調達し組み立てる。へこみを叩く。必要なパーツはどこにある?
どうしても間に合わない部品は今回出走していないピンクから調達する
引取りに地元まで取りに帰る者。大変だろうとパーツ屋を紹介してくれたり
部品を調達してくれたり。多大に協力してくれた周囲の方々。
普段は交わることは無いけれど困った時は全力で
皆が掛け値なしに協力する。人間の良い部分を濃縮したような展開が繰り広げられた。


入れる時間ぎりぎりまで必死に作業にかかるメカニック
全てはフクの素晴らしい走りに応えるために。
レースは様々な人々が関わると前に書いたが
これほど分かりやすいシュチュエーションは無いだろう。
前掲の横転した2枚目写真。フクが祈るポーズを取っているのが見て取れる。
それと同時刻。モニターの前でエースエンジニアのオガも前に同じポーズをしていたのだ。
偶然ではない。ただただ同じ気持ちだったからこそだ。
参戦するのはドライバーだけではない。
安心して走れるようマシンを整備するこんなメカニックがいるからこそ
成り立っている。

早朝から再開し、朝食も忘れて作業に没頭し気が付けば朝の10時・・・・・・・・
見事に走れる状態になった22号車が佇んでいた。
(つづく)
早いものでこのVITZレース活動を始めて3年が過ぎた。
「もっともっと車を好きになろう!」の合言葉で見よう見まねで
訳も分からず参加したのが昨日のことのようだ。

今ではお客様も応援に駆けつけてくれるようになり
今では当社の中で定番化した活動と言えるであろう。
今年は変革の年となった。
エースであった勝利レッドのエースがヴィッツを卒業。
86ではステアリングを握り続けるものの、
この一連のレース活動の総監督に就任。
ブルーに乗っていたルーキーがエースの称号であるレッドに。
中堅エンジニア(フク)がブルーに変更。
そしてフクが載っていたピンクには新ドライバーが参戦する予定だ。
今年で3年目になるモリとフク。
エースが卒業となった今、この活動を伝承していく重責を
担う事になる。

予選スタート。
正直な所、佇まいからも想像できるように走りも
モリが成績優秀、フクが見た目面白的なイメージがあり
モリが遥か先を先行しフクが後からビジュアルで魅せるという
のが定番だったので今回もそんなイメージで見ていた。
エースであるモリは予選前の占有走行では2番手。
予選で自分の走りが出来ればポールポジションも夢ではない。
走りにもそれが見て取れ、アグレッシブに攻めることで
タイムを重ねていく。
意気揚々と素晴らしい走りを見せる、、、が、
走行位置があまり良くなかったのもあり、自分がシュミレートした
思い通りとはいかず途中からは焦りが見え始める。
ドライバーの技術と気持ちとマシンの状態、
刻一刻と変化する周囲の状況。そしてお客様も含めたレースに係る
全員の気持ち。全てが1つになって初めて良い結果が生まれる。
一度ズレ始めたリンクは少しづつ蝕んでいく。
そして第一コーナーでスピンしてしまう。
気合を入れなおしてシフトを入れてリスタート。
その刹那、それまで素晴らしいタイムを重ねていたフクが
第一コーナーで大きくスピンしマシンが横転してしまう。


この時点で赤旗中断⇒終了となり予選が終わってしまった。
終了次第のタイムを取られて順位をつけられるため
モリはリカバリー時間を与えられず8位。
フクは自己最高の3位スタートが確定した。

幸いフクのけがは無かったがマシンは大怪我を負ってピットに帰ってきた。
言葉を交わさなくても状況を見ただけで誰もがこれをこれ以降の参戦は
無理だと思わせるに充分な「満身創痍」の状態だ。
瀕死の状態の家族に寄り添って手を握るような気持ちでマシンの横で
ただただ辛い顔をしたフクがいた。普段底抜けに明るいフクが雰囲気に完全に飲まれ、
折角の好タイムも吹っ飛んでしまい、そんな事より大事な車を怪我させてしまったという
自責の念で決勝に向けて気持ちをあげる以前の状態になっていた。
どうすれば良いか分からない。でも自分では何もできない。
でもどうにかしてやりたい。元の状態に戻してやりたい。
堂々巡りの気持と戦っていると自然と涙が出てきていた。
必死に自分に言い聞かせ、自分を説得しているかのような
迷いのある佇まいを見て周囲もそういう思考に支配されていく。
もう無理だ・・・諦めるしかない・・・

しかしその中に1人だけ冷静に状況を見極め、
全員ダメだと思っている中で1人だけ明日何事も無かったように
車が走っている姿を想像して前向きに行動している男がいた。
エースエンジニアのオガだ。
クルマを見つめるその姿は俯瞰で見ると冷たいように見えたかもしれない。
でも見た目からは分からないオーラを力強く放つ。
フクの気持を痛いほど理解しているからこそ熱い気持ちでクルマに視線をぶつける。
去年まで整備士の最高峰の資格試験等で大きなハードルを
努力で超えてきたガッツ。しかも必死に頑張って掴んだ好タイム。
言葉では言わないけれど今迄の必死の努力を知っている。
晴れ舞台に水を差したくない。いや、させるか!
彼の整備士魂に火がついた。
明日是が非でも満足に走れる状態に。
次の日の朝にはその状態にする。
こうなれば良いな・・からそうやりきるんだ!へ。
それには何が必要か。作業時間はどうか。
ゴールは決まっている。彼の中で膨大な逆算が始まった。
細々した作業を全て1人でシュミレーションし、出てきた答えは
彼の技術力と作業効率をもってしてもギリギリの計算結果。
行ける!いや、アイツの為に行かなくては!!
「朝までに治すぞ」
静かではあるけれと力のこもったオガのたった一言。
オガがフクの肩を軽くポンと叩く。
「任せろ」
実際にこういったのではない。
でも肩を叩くそのしぐさがそれを意味する。
お前1人の責任ではない。苦しさを1人で背負うな。
明日安心して走れるようにしてやるから任せろ。
たった一つのしぐさで全ての意味を理解したフクは
今迄1人で耐えてきた自責の念のタガが一気に外れ
大粒の涙を流す。
「ありがとうございます・・・」
消え入るような声でエースエンジニアの背中を見つめ
祈るような気持ちで車を見つめていた。
気持のスイッチが変わったのはフクだけではない。
周囲の状況が大きく一変した。彼の一言で迷いが一瞬で消えさり、
今迄バラバラだった個々の気持が「朝までに治す」という目標を
得て全てリンクし始めた。


部品を調達し組み立てる。へこみを叩く。必要なパーツはどこにある?
どうしても間に合わない部品は今回出走していないピンクから調達する
引取りに地元まで取りに帰る者。大変だろうとパーツ屋を紹介してくれたり
部品を調達してくれたり。多大に協力してくれた周囲の方々。
普段は交わることは無いけれど困った時は全力で
皆が掛け値なしに協力する。人間の良い部分を濃縮したような展開が繰り広げられた。


入れる時間ぎりぎりまで必死に作業にかかるメカニック
全てはフクの素晴らしい走りに応えるために。
レースは様々な人々が関わると前に書いたが
これほど分かりやすいシュチュエーションは無いだろう。
前掲の横転した2枚目写真。フクが祈るポーズを取っているのが見て取れる。
それと同時刻。モニターの前でエースエンジニアのオガも前に同じポーズをしていたのだ。
偶然ではない。ただただ同じ気持ちだったからこそだ。
参戦するのはドライバーだけではない。
安心して走れるようマシンを整備するこんなメカニックがいるからこそ
成り立っている。

早朝から再開し、朝食も忘れて作業に没頭し気が付けば朝の10時・・・・・・・・
見事に走れる状態になった22号車が佇んでいた。
(つづく)