ヴィッツレース 第一戦! 後編
2019.04.19
※こちらは続きとなります。よろしければ第1部よりお読みください。
ここをクリック(前編)へ

スタッフ1名1名の想いで車を修復させ、たった1日で見事に蘇った22号車。前日あれだけ瀕死の状態からの復活・・・。
今回留守番だったピンクのパーツを一晩で移植し何事も無かったかのようにそこにいる。まさしく不死鳥という言葉を目の当たりにしたような感覚だ。
恐らく今迄のネッツ神戸史上一番の熱量を持っての復帰だ。感慨深い想いで全員が車を見守る中、一際目を輝かせたフクが横にいた。

「ただいま」「おかえり」「また一緒に走ろうな」
車好きは自分の車を相棒のように擬人化しもてなす。それが愛情を深め、きっても切れない関係性を構築する。
クルマをふきあげるその背中を見るとまるで彼と車が怪我から復帰したアスリートとサポートするトレーナーが
会話をしているように聞こえてくるから不思議だ。
一体感があるのは彼と車だけではない。スタッフはもちろん遠方はるばる応援に駆け付けてくれている
お客様までもが同じ目をしている事に気づく。
恐らく一番一体化した瞬間ではないだろうか。出走中以外でもこんなにも一体となれる瞬間はそうはない。
その気持ちでキッズに増し締めをお願いする。

お客様は気付かなかったかもしれない。スタッフの笑顔の下に隠れた感謝と感動を。
本当にありがたい。力を貰っていると思える瞬間。レースをやって心から良かったと思える瞬間だ。

応援に来れなかったキッズたちのメッセージもスタッフたちのお守りになっている。毎回レース前に絶対に目立つ
場所に掲示する。気持ちを高めていくのはもちろん、スタッフが想うキッズに対しての敬意なのだ。

さあ決勝が始まる。
今年から総監督に就任した元エースから手ほどきを受ける時には既に感慨も吹っ飛び勝負師の目に変わる。
あれだけ皆がやってくれたんだ。応えない訳にはいかない。
少しオーバーヒート気味の気負いでスタートを待っているとモリがフクに声をかける。
交わした言葉は無い。でも何が言いたいかは分かる。

「お前と一緒に絶対走り切る」
お互いが押さえ合ってお互いが押し上げあう。2年の時間を経て2人は高め合うとても良い関係になっていた。
上手くクールダウンされたフクは既に落ち着いている。

ネッツ神戸という看板を背負う重圧。通常業務をしている地元での社員からの応援。お客様からの大きな期待。
それを分かった上で落ち着いてシートに座る2人がいた。

決勝は雨。路面は完全なウエットだ。滑りやすい路面をどれだけマシンコントロール出来るかが鍵となる。
スタート前の完熟走行時、モリはステアリングを両手で10時10分方向で握り路面の状況を確かめながら走行する。

スタートした。
激しくワイパーを揺らしながら第一コーナーへ飛び込む。リカバリーをさせてもらえなかったエースのモリは
8番手スタート。いつもよりかなり後方スタートなので余計にプレッシャーがきつい。

何処を走っても水しぶきを巻き上げるほどに路面は水を含んでいる。ところどころに吸水許容量を超え
水たまり化している路面がありクルマがそこを通る毎に大きいしぶきで視界まで奪われる。

そんなマイナス要因だらけの状況においても果敢に攻め続ける。一瞬1台に抜かれるもすぐに抜き返し、
ダンゴ状態になった先頭集団に攻め込む。
言い換えれば先頭集団は大きなクルマの壁になっている状態。
ここから冷静に攻め込むタイミングを計る・・・が、後方で多重クラッシュが発生しセーフティーカーが発動
暫くクールダウン走行となる。流石に苛立ちを感じる。いつでも冷静なのかと思いきややっぱり勝負師。
エースの血を受け継いでいると感じる。

シグナルが青に変わったとたん流れる景色のスピードが劇的に変わる。一瞬で戦闘モードとなるモリ。
シフトチェンジにも勢いがあり迫力があるままコーナーへ突っ込む。横へ滑ろうとする車を
抑え込みながら前へ進める。

1台が若干のコースアウトしたのをきっかけに順位を上げ次のコーナーであっという間にもう1台を外から追い抜き
前の車をテールトゥノーズでプレッシャーをかけ始める!
いつの間にか後ろにいるという表現を彼にはよくしていたのだがスタートが後方だったこともあって
そんな感じではないアグレッシブな走りを(まるで前エースをトレースするような)走りだ。
濡れた路面を味方につけたように綺麗に車を進めていく。

どの車もウエット路面で左右に振られながらも必死に押さえつけて走っていたが
コーナー前の前車の一瞬の失速をついて鼻先を出す。
画像だけ見ていると簡単に見えるが相手は上位に入り込む猛者だ。
これはエースの天性のセンスで順位を上げたその時だ。

ふっと左を向き追い抜いたことを確認して思わずガッツポーズ!
フクが走る2台後ろにまで付ける。3位と8位スタート。
エースは猛者達が建造した大きな壁をかいくぐって6位にまで浮上したのだ。

一方フクは1つだけ順位を落として4位のまま膠着状態を続けていた。
去年まで出走したら中盤か中盤より少し下を走っていたり予選落ちも経験している。
去年は公私ともに試練の年だったと思うがドライビングはもちろん
メンバー内のムードメーカーとして大きく機能していた。
彼が笑うとつられて笑ってしまうような引き込まれる明るさがあり
どんな状況においてもそれを絶やす事が無い。
そんな彼に救われたメンバーも多く、チームという枠を超えレースに来ている
他チームにもかわいがられる存在だ。

そんな彼がまるでたまっていた水を一気に放出するダムのようにいきなり大きく躍進した。
そして今回は誰よりも「ヒトの力」を感じながら車を走らせていた事だろう。
メンバー全員の力で乗り越えて今走っている。

さあ6位につけたモリ。順位が上がれば上がるほど猛者ばかりだ。
もちろん更に上に行くにはハードルが倍以上高くなる普通ならもう無理と思いそうなところだが
彼にはその高さがモチベーションに繋がっていた。

次のコーナーでスルッとイン側につきコーナーを抜ける。
濡れた路面はスロットル操作にシビアさを要求し、踏み込み過ぎればスピン、
不足すれば追い抜かれるという絶妙なコントロールが必要な場面においても冷静に周囲を見つつ
クルマを前に進める。
追い抜くまでには至らなかったが、後車の追い上げ恐怖という心理的なプレッシャーを与え、
「追う者の強さ」という心理的優位を奪取。そして次のコーナーで見事に追い抜いた。
テクニックはもちろんそう言う部分も含めてすべてを総動員しないと追い抜けない。
それほどシビアな世界なのだ。

さあ、残るは4台。前車は一緒にわかちあってきたフクが駆る不死鳥ブルーだ。
モリはエースの名にかけて勝負をかける。ある意味お互いの走りや癖を知り尽くしているので
予想外の事が起こるという不安が次の操作の選択肢を悩ませる。

ここら辺りからモリもフクも限界を少し超えた走りをし始める。
路面方向とブルーの鼻先のベクトルが合っていないのがお分かり頂けるだろうか。
横滑りをしようとする車をステアで押さえつけ、最速で走り抜ける。

でもやはりモリはエースだ。コーナーを抜けるたびにブルーに近づいていき
ついにはナンバーも読める程に接近。
そして・・・

4位に浮上したモリ。3位は遥か前方に位置しマシン性能が同等
なのも考慮すれば追い抜き可能性はゼロに近い。でも今まで以上にアグレッシブに車を走らせる。
前エースが残した「No Surrender」スピリッツはクルマに対しても。
レースドライブに対してもネッツ神戸の中で脈々と息づいている。

レースはこのままモリが4位、フクが5位でフィニッシュした。
出走44台。猛者ばかりの中でこの順位。終わってみれば両方がポイントをGET出来る大快挙だ。
良い走りが出来たのも。この気持ちを保てたのも全てはエンジニアを初めとするサポートスタッフ、
そして心から応援してくれるお客様のおかげだ。こんな場面では皆に走らせてもらった・・・
という想いが強いのは当然だ。
でも私の感覚では少し違う。応援したい気持ち。支えたい気持ち。その気持ちが本人に意図通りに伝わり
一生懸命応えようとしたことが素晴らしいのだ。
いくら周囲が声を上げても結局生かすのは自分次第であり、それをちゃんと受け取り頑張ったからこそ
成し得た結果なのだ。

最後に応援で支えてくれたお客様、参加スタッフたちにドライバーからの挨拶が行われた。
おそらくいろんな想いが交錯したのだろう。フクは嗚咽で言葉にならなかった。
「感動」とは少し違う。全員の力で蘇らせたブルーで結果を出せたやりがいと全員への大きな感謝。
いや、何も言わなくていい。今迄を全員がずっと一緒に見てきたのだ。
その顔を見ただけで。その態度を見ただけで十分すぎる程に伝わる。

こちらこそ感動をありがとう。素晴らしいドラマを創ってくれたスタッフ全員に拍手を送りたい。

当社のレースシーズンはまだまだ始まったばかり。
これからも様々なドラマを創っていきます。是非一緒に応援してください!
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スタッフ1名1名の想いで車を修復させ、たった1日で見事に蘇った22号車。前日あれだけ瀕死の状態からの復活・・・。
今回留守番だったピンクのパーツを一晩で移植し何事も無かったかのようにそこにいる。まさしく不死鳥という言葉を目の当たりにしたような感覚だ。
恐らく今迄のネッツ神戸史上一番の熱量を持っての復帰だ。感慨深い想いで全員が車を見守る中、一際目を輝かせたフクが横にいた。

「ただいま」「おかえり」「また一緒に走ろうな」
車好きは自分の車を相棒のように擬人化しもてなす。それが愛情を深め、きっても切れない関係性を構築する。
クルマをふきあげるその背中を見るとまるで彼と車が怪我から復帰したアスリートとサポートするトレーナーが
会話をしているように聞こえてくるから不思議だ。
一体感があるのは彼と車だけではない。スタッフはもちろん遠方はるばる応援に駆け付けてくれている
お客様までもが同じ目をしている事に気づく。
恐らく一番一体化した瞬間ではないだろうか。出走中以外でもこんなにも一体となれる瞬間はそうはない。
その気持ちでキッズに増し締めをお願いする。

お客様は気付かなかったかもしれない。スタッフの笑顔の下に隠れた感謝と感動を。
本当にありがたい。力を貰っていると思える瞬間。レースをやって心から良かったと思える瞬間だ。

応援に来れなかったキッズたちのメッセージもスタッフたちのお守りになっている。毎回レース前に絶対に目立つ
場所に掲示する。気持ちを高めていくのはもちろん、スタッフが想うキッズに対しての敬意なのだ。

さあ決勝が始まる。
今年から総監督に就任した元エースから手ほどきを受ける時には既に感慨も吹っ飛び勝負師の目に変わる。
あれだけ皆がやってくれたんだ。応えない訳にはいかない。
少しオーバーヒート気味の気負いでスタートを待っているとモリがフクに声をかける。
交わした言葉は無い。でも何が言いたいかは分かる。

「お前と一緒に絶対走り切る」
お互いが押さえ合ってお互いが押し上げあう。2年の時間を経て2人は高め合うとても良い関係になっていた。
上手くクールダウンされたフクは既に落ち着いている。

ネッツ神戸という看板を背負う重圧。通常業務をしている地元での社員からの応援。お客様からの大きな期待。
それを分かった上で落ち着いてシートに座る2人がいた。

決勝は雨。路面は完全なウエットだ。滑りやすい路面をどれだけマシンコントロール出来るかが鍵となる。
スタート前の完熟走行時、モリはステアリングを両手で10時10分方向で握り路面の状況を確かめながら走行する。

スタートした。
激しくワイパーを揺らしながら第一コーナーへ飛び込む。リカバリーをさせてもらえなかったエースのモリは
8番手スタート。いつもよりかなり後方スタートなので余計にプレッシャーがきつい。

何処を走っても水しぶきを巻き上げるほどに路面は水を含んでいる。ところどころに吸水許容量を超え
水たまり化している路面がありクルマがそこを通る毎に大きいしぶきで視界まで奪われる。

そんなマイナス要因だらけの状況においても果敢に攻め続ける。一瞬1台に抜かれるもすぐに抜き返し、
ダンゴ状態になった先頭集団に攻め込む。
言い換えれば先頭集団は大きなクルマの壁になっている状態。
ここから冷静に攻め込むタイミングを計る・・・が、後方で多重クラッシュが発生しセーフティーカーが発動
暫くクールダウン走行となる。流石に苛立ちを感じる。いつでも冷静なのかと思いきややっぱり勝負師。
エースの血を受け継いでいると感じる。

シグナルが青に変わったとたん流れる景色のスピードが劇的に変わる。一瞬で戦闘モードとなるモリ。
シフトチェンジにも勢いがあり迫力があるままコーナーへ突っ込む。横へ滑ろうとする車を
抑え込みながら前へ進める。

1台が若干のコースアウトしたのをきっかけに順位を上げ次のコーナーであっという間にもう1台を外から追い抜き
前の車をテールトゥノーズでプレッシャーをかけ始める!
いつの間にか後ろにいるという表現を彼にはよくしていたのだがスタートが後方だったこともあって
そんな感じではないアグレッシブな走りを(まるで前エースをトレースするような)走りだ。
濡れた路面を味方につけたように綺麗に車を進めていく。

どの車もウエット路面で左右に振られながらも必死に押さえつけて走っていたが
コーナー前の前車の一瞬の失速をついて鼻先を出す。
画像だけ見ていると簡単に見えるが相手は上位に入り込む猛者だ。
これはエースの天性のセンスで順位を上げたその時だ。

ふっと左を向き追い抜いたことを確認して思わずガッツポーズ!
フクが走る2台後ろにまで付ける。3位と8位スタート。
エースは猛者達が建造した大きな壁をかいくぐって6位にまで浮上したのだ。

一方フクは1つだけ順位を落として4位のまま膠着状態を続けていた。
去年まで出走したら中盤か中盤より少し下を走っていたり予選落ちも経験している。
去年は公私ともに試練の年だったと思うがドライビングはもちろん
メンバー内のムードメーカーとして大きく機能していた。
彼が笑うとつられて笑ってしまうような引き込まれる明るさがあり
どんな状況においてもそれを絶やす事が無い。
そんな彼に救われたメンバーも多く、チームという枠を超えレースに来ている
他チームにもかわいがられる存在だ。

そんな彼がまるでたまっていた水を一気に放出するダムのようにいきなり大きく躍進した。
そして今回は誰よりも「ヒトの力」を感じながら車を走らせていた事だろう。
メンバー全員の力で乗り越えて今走っている。

さあ6位につけたモリ。順位が上がれば上がるほど猛者ばかりだ。
もちろん更に上に行くにはハードルが倍以上高くなる普通ならもう無理と思いそうなところだが
彼にはその高さがモチベーションに繋がっていた。

次のコーナーでスルッとイン側につきコーナーを抜ける。
濡れた路面はスロットル操作にシビアさを要求し、踏み込み過ぎればスピン、
不足すれば追い抜かれるという絶妙なコントロールが必要な場面においても冷静に周囲を見つつ
クルマを前に進める。
追い抜くまでには至らなかったが、後車の追い上げ恐怖という心理的なプレッシャーを与え、
「追う者の強さ」という心理的優位を奪取。そして次のコーナーで見事に追い抜いた。
テクニックはもちろんそう言う部分も含めてすべてを総動員しないと追い抜けない。
それほどシビアな世界なのだ。

さあ、残るは4台。前車は一緒にわかちあってきたフクが駆る不死鳥ブルーだ。
モリはエースの名にかけて勝負をかける。ある意味お互いの走りや癖を知り尽くしているので
予想外の事が起こるという不安が次の操作の選択肢を悩ませる。

ここら辺りからモリもフクも限界を少し超えた走りをし始める。
路面方向とブルーの鼻先のベクトルが合っていないのがお分かり頂けるだろうか。
横滑りをしようとする車をステアで押さえつけ、最速で走り抜ける。

でもやはりモリはエースだ。コーナーを抜けるたびにブルーに近づいていき
ついにはナンバーも読める程に接近。
そして・・・

4位に浮上したモリ。3位は遥か前方に位置しマシン性能が同等
なのも考慮すれば追い抜き可能性はゼロに近い。でも今まで以上にアグレッシブに車を走らせる。
前エースが残した「No Surrender」スピリッツはクルマに対しても。
レースドライブに対してもネッツ神戸の中で脈々と息づいている。

レースはこのままモリが4位、フクが5位でフィニッシュした。
出走44台。猛者ばかりの中でこの順位。終わってみれば両方がポイントをGET出来る大快挙だ。
良い走りが出来たのも。この気持ちを保てたのも全てはエンジニアを初めとするサポートスタッフ、
そして心から応援してくれるお客様のおかげだ。こんな場面では皆に走らせてもらった・・・
という想いが強いのは当然だ。
でも私の感覚では少し違う。応援したい気持ち。支えたい気持ち。その気持ちが本人に意図通りに伝わり
一生懸命応えようとしたことが素晴らしいのだ。
いくら周囲が声を上げても結局生かすのは自分次第であり、それをちゃんと受け取り頑張ったからこそ
成し得た結果なのだ。

最後に応援で支えてくれたお客様、参加スタッフたちにドライバーからの挨拶が行われた。
おそらくいろんな想いが交錯したのだろう。フクは嗚咽で言葉にならなかった。
「感動」とは少し違う。全員の力で蘇らせたブルーで結果を出せたやりがいと全員への大きな感謝。
いや、何も言わなくていい。今迄を全員がずっと一緒に見てきたのだ。
その顔を見ただけで。その態度を見ただけで十分すぎる程に伝わる。

こちらこそ感動をありがとう。素晴らしいドラマを創ってくれたスタッフ全員に拍手を送りたい。

当社のレースシーズンはまだまだ始まったばかり。
これからも様々なドラマを創っていきます。是非一緒に応援してください!